BG様の一途な愛情
6
 シャワーを浴びてからドライヤーで髪を乾かし、リビングに戻った瞬間に紘太によってベッドに連れて行かれ、あっという間に眠りの世界に誘われる。

 ベッドからは紘太の香りがし、もっと彼に包まれたくて、布団をギュッと抱きしめた。すると麻里亜の願望なのか、紘太に優しく髪を撫でられながら、額にキスをされる夢を見てしまったのだ。もっととせがむと唇にキスをされ、麻里亜の下半身は疼きを増して行く。

 言いようのない満足感の中で目を覚ました時には、日がとっぷりと暮れて夜になっていた。

 あんな夢を見るなんて、私ってばどれだけ欲求不満なのかしら! 恥ずかしくて布団をかぶったのに、再び紘太の香りに包まれて体が熱くなるのを感じた。だがキッチンから漂うカレーのいい香りが、性欲よりも食欲へと誘っていく。あんなに食欲が湧かなかったはずなのにーー紘太の香りに包まれただけで、こんなにも心と体が癒やされたことに驚きしかなかった。

 むくっと起き上がった麻里亜はハッとした。自分がすっぴんであることに気付いて焦り始めるが、どうせ小さい頃からすっぴんを見られ続けてきたわけだし、今更彼は何も思わないに違いないと半ば諦めてリビングとの間にある引き戸を開ける。するとカウンターキッチンの向こう側で、紘太が鼻歌を歌いながらカレーを作っているところだった。

「あっ、起きた? まだ寝てても大丈夫だよ」
「ううん、もう平気。ベッド貸してくれてありがとう」
「いえいえ。ご飯ももう少しで出来るから、ちょっと待っててね」
「あっ、じゃあ何か手伝うよ。やってもらってばかりじゃ申し訳ないし」
「それならご飯よそってくれる?」
「もちろん」

 食器棚から出した皿を受け取る時、自分だけが部屋着用のワンピースであることに気恥ずかしさを覚えたが、すっぴん同様、きっと彼は何も思わないだろうと自分に言い聞かせる。

「紘太くんもちゃんと自炊してるんだね」
「いや、してないよ。これは俺が作れる、数少ないレパートリーの一つ。さっき材料だけ届けてもらった」
「そうなの? でも何も出来ないよりはいいんじゃない?」
「あはは! いいね、麻里亜ちゃんのその前向きな発言、すごく好きだな」

 発言が好きだなんで、なんとも微妙にニュアンスに思わず苦笑いをした。
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