BG様の一途な愛情
 リビングのテレビの前に置かれたローテーブルにカレー皿を置き、スプーンを添える。それから紘太が持ってきたお茶が入ったグラスを受け取り、二人は向かい合わせに座って食べ始めた。

「普段は買って食べてるの?」
「それか食べてきちゃうかな。でもこうして麻里亜ちゃんと一緒に食べられる日が来るなんて、俺としてはすごく感慨深いけど」
「そんな……だって遊びにいった日はいつも一緒に食べてたし……」
「あの時はみんないたからね。二人ではなかった」

 なんて返事をするべきかわからず、麻里亜は口籠った。それを見ていた紘太はクスクス笑い始めたが、食べ物が喉につっかえそうになったのか、拳で胸をドンドンと叩いた。

「麻里亜ちゃんさ、もう少し自分の可愛いさを自覚したほうがいいと思う」
「か、可愛いって……紘太くんはそういうふうに、すぐにからかうんだから!」
「えっ、からかってるように見えた? それは心外だなぁ。俺は麻里亜ちゃんが小さい頃から、この子は絶対に可愛いくなる! 間違いない! そうみんなに言い続けてきたんだよ」

 彼は自信満々にそんな言葉を口にしたが、麻里亜はそうではなかった。唇をギュッと結んで俯いた。

「それって……小さい子への表現でしょ? どうせ妹みたいって言うんだよね。それくらいはわかってるから……。はい、ご馳走様でした!」

 食べ終えた麻里亜は、食器を持ってキッチンに行く。

「えっ、早くない⁈」
「仕事柄、早食いは慣れているだけ」

 シンクに皿を置いて水を出すと、紘太も後から追いかけてきた。そして同じように皿を置いたかと思うと、麻里亜の体をシンクと自分の体で挟み込むようにして立って動きを封じてしまう。

「あのっ……紘太くん、これじゃあ動けないよ」
「だって動けないようにしてるもん」

 頭の後ろから響いてくる柔らかな声を感じ、麻里亜の体はブルッと小さく震えた。

「はぁ、こんなはずじゃなかったんだけどな」

 彼は何を言おうとしているんだろうーー悪いことばかり想像してしまい、次の言葉を聞くのが怖くなる。

「こんなはずって……んっ……」

 後ろを振り返ろうとした瞬間、紘太の長い指に顎を引き寄せられ、唇を塞がれたのだ。突然のことに思考が追いつかず、麻里亜は何度も目を(しばた)く。

 紘太の唇が離れても、麻里亜はまだ夢を見ているかのように、ふわふわとした感覚の中で、彼をじっと見つめた。
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