BG様の一途な愛情
「そんなこともありましたね。でも安東さんがすぐに怪我をするからですよ。もう少し気をつけてくださいね」
「あはは! まんま同じことを昔も言われたよね! 懐かしいなぁ」

 昔から変わらない屈託のない笑顔は、最近ずっと張り詰めていた麻里亜の心をほんの少しだけ緩めてくれた。

「あっ、やっと笑った」

 ハッとして口元を押さえると、慌てて視線を逸らした。別に笑うのは構わない。だけど、笑っていなかったことを指摘されたことで、気まずさを覚える。

「敬語なのは仕事中だから?」
「……はい……」
「ふーん、そっか。じゃあそういうことにしておこうかな。でも何かあったら教えてね」

 麻里亜はドキッとした。三年ぶりに会ったし、短時間しか一緒に過ごしていない。なのにこんなにも見透かされたような気持ちになるのはどうしてだろう。

「あっ、今日ってシャワーは浴びていいのかな?」
「今日は……ダメです……」
「そうなの? 残念。汗臭くても引かないでね」
「……引くわけないじゃないですか」

 何事もなかったかのように会話が進み、麻里亜はホッと胸を撫で下ろす。だが彼が疑念を抱いていること、麻里亜から話すのを待っていることはわかった。

 頼ってしまいたい気持ちをなんとか心の奥底にしまい込み、仕事に集中すると、紘太はそれ以上何も聞いてこなかった。
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