BG様の一途な愛情
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 その異変に気付いたのは、二週間ほど前のことだった。いつものように仕事を終えて帰宅すると、部屋の様子が普段と違う気がしたのだ。

 全体的には変わったところはないように思える。しかし微妙なところーー例えばキッチンの蛇口の向きや、机の引き出しの中の小箱の位置、本棚に置かれた本の並び方など、小さな部分に違和感を覚えた。

 最初は気のせいだと思った。しかしその疑念は、数日経っても消えることがなく、むしろ深まっていく。

 そしてつい先日、不安な気持ちのまま麻里亜がテレビを見ていた時だった。ふとテレビ台に置いていたウサギの人形が目に入る。それを見てゾッとした。昨夜、自分を見ているウサギの目が気になって、斜めの方向を向くように置き直したのだ。それが今、こちらを向いて座っているーーつまり誰かが置き直したということになる。

 そのことに気付いた麻里亜は体が凍りつき、小さな悲鳴をあげた。動揺しちゃダメよーーそう思うものの、恐怖に襲われ、スマホだけ持って家の外に飛び出したのだ。

 誰かが部屋に入っているのかもしれないと思うと、怖くて部屋には居られなかった。

 それからは、仕事を終えて家に帰るとすぐに鍵とチェーンを二重で閉め、家の中を隅から隅まで確認をして安心感を手に入れてから、ようやくシャワーをあびるという流れを繰り返していた。

 暗がりの中に一人で眠るのは怖くて勇気がいった。だからなるべく夜は夜勤で職場にいるようにし、最近は僅かだが安心感が生まれ始めていた。

 そのことは職場はもちろん、家族にだってだまっていたのに、どうして紘太さんにはバレたのかしらーーいや、本当は気付いていなくて、疑心暗鬼になっている麻里亜の心がそう思わせただけということもある。

 きっと私の思い過ごし。そうに違いないーー麻里亜は自分自身に言い聞かせると、突然鳴り始めたナースコールを取るために立ち上がった。
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