ふぞろいなふたごは幼なじみを嗜む

わたしは、涼くんのなにもかも見透かすような目から顔を背けたくて、うつむいた。



恭くんは隣に住む幼なじみで、優しくてかっこよくて、絵本のなかにしかいないと思っていた本物の王子さま。


そんな恭くんを、わたしは慕っていた。


夢を追いかける姿がまぶしくて、夢を追いつづける恭くんをそばでずっと見守っていたくて。


恭くんが望みを叶えられるなら、わたしはなんでもする。



ふたりで観たドラマにキスシーンがあって。


「いつか恭くんもするのかな」
とひとり言としてつぶやいたとき、


「必要ならするけど、そのときは相手を絢音だと思ってするよ」


そう言われて内心は複雑だったけど、うれしかった。



いつかくる恭くんのキスシーンのために、恋愛ドラマや恋愛映画をたくさん観て耐性をつけた。


“わたしは恭くんを応援する”


その言葉ばかり言っていたから、それが自分の本心だと勘違いしてた。


恭くんのことは好きだけど、それは人として尊敬できるから好きなだけ。恋愛的な意味はない。






──はずだったのに。


< 37 / 100 >

この作品をシェア

pagetop