ふぞろいなふたごは幼なじみを嗜む
いくつか会話を交わして電話を切ったあと、お兄ちゃんの部屋で漫画を読んでいる涼くんに訊いてみると。
「どっちでもいい」
と、決定権を投げられたので、わたしたちは恭くんが待つ映画館に行くことにした。
「恭くん、お待たせ」
映画館の入口で、メガネをかける恭くんを見つけた。
「早かったね」
「待たせたら悪いと思って。それより、なんの映画を観るの?」
「絢音が決めていいよ」
「恭くんが観たくて誘ったんでしょ。恭くんが観たいのでいいよ」
「おれはなんでもいいよ。絢音と観たかっただけだから」
さらりとそう言う恭くんには特別な意図はなくて、言われ慣れているわたしはいつもなにも考えずに受け入れる。
けれど、今はとても「わたしも恭くんと観られるならなんでもいい」とは返せなかった。
「まあでも、絢音のことだからこの恋愛映画かな?」
と、恭くんが指したのは、タイトルに夏の文字が入った恋愛映画のポスター。