ふぞろいなふたごは幼なじみを嗜む
観るものを決めたわたしたちは、チケットを買って席に着いた。
公開からけっこう日数が経っている映画なので、夏休みにもかかわらず席が埋まらない程度の空き具合で、ゆったりと観られそうだった。
わたしの右隣には恭くんが、左隣には涼くんが座った。
「絢音と映画館に来るのひさしぶりだね」
「そうだね。中二のときに友達何人かと一緒に来て以来?」
「そうそう。なにを観るかで揉めたときだ」
「なんでひさしぶりなの? 一緒に来たりしなかったの?」
涼くんが尋ねてきた。
「恭くんの立場上、女性とふたりでいるところを見られたらまずいんだよ。だから、外では会わないようにしてるの。リスク管理ってやつ」
「まあ、まだ顔バレしても騒がれるほど知られてないから、意識しすぎかもだけどね」
「へえ」
と、尋ねておいて興味なさそうに涼くんが相槌を打ったきり、会話が途切れた。
スクリーンにはこれから公開される映画の予告や、サイトに登録してお得に映画を鑑賞しようみたいなCMが流れている。