ふぞろいなふたごは幼なじみを嗜む
スマホの電源を切ったか今一度確認して、劇場が暗くなるのを待つ。
ふいに、ひじ掛けに置いていた右手を握られた。
右側──つまり、恭くんの手。
はっとして隣を見ると、恭くんは何事もないかのように目線をスクリーンに向けている。
「あの話なんだけど」
ひとり言のつもりか、話しかけているつもりかわからない声でささやいた。
前者だと思おうとしたけれど、一応、反応してみる。
「あの話って?」
「僕好き」
「ああ、うん……」
反応しなければよかったと思ったのもつかの間、恭くんが横目でわたしを一瞥した。
「絢音が毎シリーズ楽しみにしてるのはわかってるんだけど、おれが出るやつだけは観ないでほしいんだ」
スクリーンの光が反射してチカチカと映し出される恭くんの横顔が、なぜか困ったような表情をしていて。
わたしは、どうしてと聞き返すことができなかった。
もともとそのつもりで、どうやって観ない言い訳をしようか考えていたから、そう言ってくれるのはむしろありがたくて、「うん」とだけ答えた。