ふぞろいなふたごは幼なじみを嗜む

必死に抵抗するも、彼女が馬乗りになって髪や服を強い力で引っ張ってくるので、彼女の手首をぐっと握ることしかできない。


痛い。頭皮ごと持っていかれそうに痛い。


すると彼女は、注目しろと言わんばかりに手を挙げて、周りにいる人たちに向かって叫んだ。


「みなさん! こいつ誘拐犯です! あたしの男隠してるんです!」


なにを言って──!


「おい真珠(まじゅ)、やめろ!」


そのとき、わたしに馬乗りになっていた彼女が、戻ってきた涼くんによって引き離された。


「すーか!」

「絢音、大丈夫か?」


涼くんを見た途端、顔をぱっと明るくさせる彼女。

そんな彼女を無視して、涼くんはわたしを起きあがらせてくれた。


「だいじょうぶ、じゃない……」


さすがに強がれなかった。


いきなり知らない人に叩かれて、押し倒されて、髪を引っ張られ、誘拐犯扱いされて。大丈夫なわけがなかった。


体が小刻みに震えている。

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