ふぞろいなふたごは幼なじみを嗜む
涼くんはなにも答えなかった。
その代わり、悲しそうだった顔におだやかなほほえみを浮かべてわたしを見てきた。
涼くんとは思えない、胸に迫る優しい表情。
涼くん、こんな顔もできるんだ。
ちょっとだけ恭くんみたい……と思ったところではっとする。
「そういえば、さっきの『捨てた』ってどういう意味?」
ごまかすように話を戻した。
「あれは真珠にとって呪いの言葉なんだよ。親に捨てられ男に捨てられ……なるべく言いたくなかったけど、暴走するあいつを止めるにはああ言うしかなかった」
「そうなんだ。真珠さんは涼くんのことが好きみたいだけど、涼くんも嫌いなわけじゃないんだよね?」
「は?」
「だって、家に入れてたじゃん。それって、そういうことをする仲ってことだよね?」
「ちげーよ。あれは絢音をつき放すために入れただけで、あのあとすぐ追い返したし。俺は好きでもない女は抱かない」
「そう、なんだ……」
ということは。
「じゃあ、わたしが涼くんの家に行ったときも、最後までするつもりはなかったんだ」