ふぞろいなふたごは幼なじみを嗜む

ぷっつりと会話が止まって、時間と歩みだけがゆっくりと進んでいく。


「…………」

「…………」


なにか言わなきゃ。

そう思って口を開きかけたところで、先に涼くんが沈黙を破った。


「言っとくけど、これは告白じゃないから。なにも言うなよ。俺は絢音を応援するって決めたし」

「応援?」

「絢音が恭花とどうなりたいのか知らないけど、俺は絢音が決めたことを応援する。心からの応援じゃないだろうけど、後押しくらいはできる」


涼くんが恭くんの名前を口にした瞬間、なぜかさっき観た映画のワンシーンが頭の中に流れこんできた。


主人公と、彼を貶めたかつての親友が、ようやく直接対決をするシーン。

ふたりが口八丁手八丁でだましあいを繰り広げていた。


そのシーンで覚えているのは映像のみ。
どんな会話が交わされていたのかは覚えてなくて。


なのになんで突然、そのシーンを思い出したかというと、そのときにまったく別のことを考えていたからだ。


巧みな心理戦が行われている真っ最中に、わたしは恭くんとのこれからを考えていた。

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