ふぞろいなふたごは幼なじみを嗜む
しゃーない運んでやるか、と腕をつかみ上げたとき、絢音の耳からぽろっとイヤホンが落ちた。
なにを聴いてたのか気になってそれを耳につけると、聞こえてきたのは男の声。
どうやらスマホでラジオを聴いていたらしい。
『献身的な幼なじみと趣味の合う女友達、相良くんならどっち?』
『ぼくは幼なじみだね』
──恭花の声だ。
『実際、ぼくにも幼なじみがいるけど、やっぱり幼なじみって特別感があるよね』
『えっ、いるんだ。男子? 女子?』
『どっちも』
俺はラジオを切った。
すやすやと気持ちよさそうに寝息を立てる絢音の頭に触れる。
「……もう遅ぇよ」
中学のときは、ふたりが両想いだという現実を受け入れられなくて逃げ出したけど、もう逃げない。
今度こそ本気でぶつかってやる。
だから、恭花。
今さら取りにきても手遅れだ。