ふぞろいなふたごは幼なじみを嗜む
涼くんがやってきたのは、三曲目のラスサビが流れているとき。ふいに片耳のイヤホンが外れた。
……というか、外された。
「悪い、遅れた」
わたしのイヤホンの片方をとって、そう言いながら向かいの席に座った涼くん。
制服を着ていて、口もとには黒いマスクをしている。
わたしが家を出るときも家に帰ったときも、いつも涼くんは家にいるから、てっきり学校をサボってるのかと思っていたけど、ちゃんと行っているらしい。
「女の子を待たせるなんてサイテー」
冗談を言いながらもう片方のイヤホンをとって、バッグにしまった。
「だったら、待ち合わせ場所をこっちの最寄りにしてくれ。おまえのガッコー遠いわ」
「だって、こっちのほうが栄えてるし。ショッピングにはもってこいでしょ」
「ショッピング? え、なにそれ。聞いてないんだけど」
「うん言ってないよ。断られると思ったから」
「いや、べつに断んねぇけど」
涼くんは、あきれたような重い息を吐き出した。
女子のショッピングが長いことをよくご存じで。