ふぞろいなふたごは幼なじみを嗜む
つづいて、飲み終えたグラスを片づけようとしたら、奪いとるように涼くんが先に持ってくれて。
女子高生グループの横を通りすぎようとしたときだった。
「あの!」
グループのひとりが……というよりは、その子がみんなを代表して、といった感じで、なぜか涼くんを足止めしてきた。
「なんすか?」
「相良恭平くんですか?」
その瞬間、老若男女の作りだす有相無相の音が一斉にやんで、涼くんに意識が集中砲火するような錯覚に陥ったのは、わたしの思考が一時的に停止しただけにすぎないんだけど。
そうなってしまうほど理解に苦しむ状況だった。
実際には、まわりはいつもどおりに動いている。
涼くんを相良恭平と勘違いしているのは彼女たちだけ。
いつから彼女たちはうわさをしていたのだろう。
『隣の席の人、相良恭平じゃない?』
おそらくそんなコソコソ話をしていたはずなのに、全然気づかなかった。
「違います」
涼くんは至って冷静に、即否定した。