ふぞろいなふたごは幼なじみを嗜む

女優を志す足がかりとして僕好きを利用し、その相手役に、すでに俳優として実績のあるおれを選んだ──と聞かされたのは、撮影の中盤あたり。


『私がほしいのは知名度。きょーへーとカップルになったら、嫌でも注目浴びるもんね』


いつだったか、カメラが回っていないところでそんなセリフを、平然と吐き捨てた望愛の笑顔を今でも忘れない。


望愛の悪魔的とも呼べる計画によって、おれは、彼女とカップルになる道を選ばされた。


でもまあ、それはまだいい。
おれの最大の失敗は……。


「けど、ほんとに大丈夫なの? きょーへーの好きな子」

「大丈夫って?」

「仮にきょーへーの好きな子が、きょーへーを好きだった場合、恋愛リアリティーショーに出るってだけでふつうは発狂モンだよ? なのに、彼女なんか作っちゃってさぁ」


おれの失敗は、絢音のことを望愛にしゃべったことだ。

撮影が終わったあとに望愛からしつこい尋問を受けて、好きな子がいることを話した。

< 78 / 100 >

この作品をシェア

pagetop