ふぞろいなふたごは幼なじみを嗜む

このまま動画の続きを観る気にはなれず、アプリを切り替えて、わたしも電子書籍で漫画を読むことにした。


涼くんに対抗して、という気持ちも少なからずあったと思う。

だから、なにを読もうかと考えたあげく、涼くんが読んでいる漫画の作者の、別の作品を開いたときだった。


「で、なにかあった?」


沈黙の空間に、そんな問いかけが響いた。


わたしが体の向きを直し、アプリをひらいて、なにを読もうか考えて……。一連の行動をするだけの時間を置いてのことだった。


「え?」


振り返ると、涼くんは漫画を開いたまま。


「声に元気がない」


漫画に視線を走らせつづけながらそんなことを口するから、わたしは思わず下唇を噛んでいた。


なんなんだろう涼くんって。


優しい恭くんならきっと、こういうときは漫画を読む手を止めて、顔を見て心配してくるところを、涼くんは中途半端に踏みこんでくる。


漫画を読みながら、わたしの心を読む。


人を励ますつもりがあるならマルチタスクはやめてよと思うのに、むしろそれくらいの距離感のほうが心地よいと思ってしまうのはどうしてだろう。

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