ミーコの願い事
「白いジャケットとか着て爽やかに見せるとか……そうね今ドラマとかで流行っているから、爽やかな人モテるかもね」

 何故かメモに書かれていることを読み上げ、それに対し感想を述べています。
 今度は鈴野さんが、メモを持ってきました。

「オープンカフェでお茶を飲むとか……あー、会社の周りにも小さなお店が何件か有るしね、私もたまには行ってみたいなー」

 森川さんは誰と喋っているのか、わからなくなっていました。
 杉田さんは電話の向こう側で、悩んでいるようでした。

 それもそのはず、皆さんはミーコのことは知らずに、私に気に入られよにと、対策を考えているのだと思います。

 高木さんはニヤけながらメモを持ってくると、急ぐように自分の席にもどりました。

「好きな……こ……ちょっと、高木くん。字が汚くて読めないよー」

 森川さんはメモを上に持ち上げ、高木さんに注意しています。

「えーっ、高木さんってなんですかー」

 受話器と同時に、応接室から杉田さんの声がします。
 
 桜井さんは、立ち上がりみんなを見渡すと、呆れたように首を軽く振りました。
 背筋を伸ばし、静かに足を運びます。
 普段よりすました歩き方に、自信があるように思われます。

 そして、机の上に優しくメモを置くと、スーッと森川さんの前に移動させました。
 森川さんは不思議そうに、桜井さんを見送った後、メモを読み上げました。

「髪型を、油で固めた七三分けにするとか」

 それを聞いた杉田さんは、みんなに聞こえる大きい声で笑い始めました。

「……ぷっあっはっはっはっは。冗談ですよねー今時それは無いですよー、その髪型が紳士的に見えるの何十年前ですかー」

 応接室にいることを忘れ、大声で笑い話します。
< 100 / 115 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop