ミーコの願い事
 ミーコは鉛筆の手を止め、こちらを見つめ話します。

「ミーコも、お母さんのそれ、あっても嫌いにならないよ。だってお母さんは、ミーコのお母さんだもん」

 その言葉に私は、全てのことが救われました。
 もしミーコが絵でなく実体が存在するなら、今すぐにでも強く抱きしめたい想いです。
 でもそれは、決して言葉に出してはいけないことだと、わかっています。

 自然にミーコの手に指先を添えると、感謝の言葉をかけます。

「ミーコ、ありがとう。これからもずっと、思ったことをいっぱいしゃべろうね!」

 一瞬、私の指先を見つめたミーコでしたが、上を見上げると、思い出したかのように話します。

「そうだ、スギタがねー。明日お母さんに、内緒のプレゼントでびっくりさせるんだって」

 その言葉に慌てました。
 会話は言葉を選んで喋らなきゃダメだということに、あらためて学びました。

 翌日の土曜日は、午前中で仕事が終わるので、皆さん平日よりリラックスしています。
 楽しそうに立ち話をしている風景、社長と森川さんはゴミ出しのことで会話をしています。

「私が出しときますよ」

「いいから、あなたは座ってなさい」

 聞こえてくる言葉は、相変わらず親戚のおばさん達のような会話です。
 杉田さんが視界に入ると、こちらをチラチラ見ながら仕事をしていることに気付きました。
 私は昨日のミーコの言葉を、思い出してしまいます。

 やだー聞くんじゃなかったー。

 妙に意識してしまい、期待している自分が恥ずかしくなっていました。
 そばに居た社長と森川さんは、結局二人で一つのゴミを持ち、会社の外にあるゴミ捨て場に出て行きました。

 杉田さんは二人が離れたことを確認すると、席から立ち上がり近寄ってきました。
 図々しいながらも、サプライズプレゼントだと思いました。

「あのーこれ好きだと聞いて」

 そう語り差し出したものは、無造作にビニール袋に入っていました。
 えっプレゼント?
 
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