ミーコの願い事
 その見た目から唖然としてしまい、無言のまま受け取りました。

 外観から予測は出来ましたが、中を見ると入っていたものは、カップ麺が数個。

「意外なものが好きなんですねー」

 悪意の無いその言葉に、お礼しか言えませんでした。

「……ありがとうございます」

「ミーコちゃんに、合わせてもらってもいいですか? それと、少しノートにペンを入れさせて下さい」

 明るく喋る杉田さんをよそに、ミーコが私の好物がカップ麺と伝えていたと推測し、身から出たサビだと思いました。

「おはようミーコちゃん。これプレゼント」

 今度はノートに、小さな絵を描き始めました。
 描き上がった絵は、瓦せんべいです。

「あれ、上手」

 私の言葉に杉田さんは喜びを隠すように、澄ましています。
 以前に、杉田さんが描いたチューリップと絵のタッチが違い、バランスも良く、何処か優しい形をしています。

 私はすぐに森川さんに教わり、練習したのだとわかりました。

「スギタ、ありがとう」

 ミーコは喜んでいます。

「それじゃーねー、ミーコちゃん」

 少しけんきょに手をふると、晴れやかな表情で席に戻っていきます。
 何度も描いて練習したんだろうなー

 そんな杉田さんの後ろ姿を見て、少し可笑しく思いました。
 
 仕事が終わり帰宅すると、ミーコが思い出したかのように、変な言葉使いで話します。

「あっそうだ、明日台公園に出かけるように、お願いします」

「どうしたのミーコ、言葉に感情がないから気持ち悪いよ、それにこの前も行ったばかりじゃない」

 私の言葉にも反応することもなく、スケッチブックを広げなにやら確認をしています。

「あ、す、の、十二、じ。三十、ぷん。に、ひ、ろ、ば、の、ベ、ン、チ」

 モールス信号のようにたどたどしく、読み上げています。

「なーにそれ?」

「スギタが、お母さんを連れてきてって言った」

「もしかしてトイレでいない時?」

「そお、お母さんがトイレでいない時、森川さんも居た」

 想像を裏切らない言葉が、返てきました。

「森川さんは何か言っていた?」

「森川さんはミーコがお外にいるのに、部屋に向かって、こんにちわしてた」

 私は定期的な会話に慣れてしまったせいか、驚くこともせず公園内の場所を思い出し、確認していました。
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