ミーコの願い事
「星形の花かー、似たような形は色々あるけど、これはペンタスかな?」

 ペンタスの存在を、認識していることに、驚いてしまいます。

「ペンタスも知っているんですか?」

 その言葉に軽く頷き、安心した表情を見せました。

「昔、女の子達に人気があったと、バイト先の店長から聞いたのですが、花言葉は……あれ? 何だったけなー」

 お花に詳しいことに喜ぶ私でしたが、不意にアザのこと思い出してしまい、心から喜ぶことが出来ませんでした。
 そんな私に反し、ミーコは関係のない質問をし始めました。

「ねーねー、スギタはお母さんのどこが好きなの」

 私は突拍子も無い質問に慌てました。

「ちょっと、ミーコ何を言い出すの」

 全身に汗をかきながらも注意しましたが、ミーコは気に止めていない様子です。

「綺麗なところ?」

 しかも、ひいき目で見ても、私は綺麗な部類には入らないと思っています。
 本来なら、ミーコのおかしな会話も、楽しいものになったと思うのですが、今の私にはただ辛いだけです。
 浮だつ恥ずかしさよりも、胸に重くのし掛かる、嫌悪感がカサを増すようでした。

 説明するべきでしょうか。
 アザのことをはなしても、受け入れてもらえ得るのでしょうか。
 そんな想いが頭を、駆け巡ります。

 杉田さんは顔を赤らめて、私の表情を確認しています。

「やだなーミーコちゃん。何をいきなり、あっはははは」

 夜のとばりが落ちたらしく、雲で覆われた灰色の空を、みるみる暗い世界に染め始めていました。
 公園内の明かりも、ぼんやり点き出しています。

 伝えなきゃ。これ以上杉田さんに期待させてもいけない。

 街灯に照らされる杉田さんに向け、私は口を開きました。

「あのー。こんなこと言うのは変なのですが」

 突然絞り出す声に、杉田さんの視線は不安なものに変わります。
 決心が付いたものの、これから話す内容に喜びが途絶えるのかと考えると、感情がわからなくなっていました。
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