ミーコの願い事
会社から私の住むアパートまでは、自転車で十分ぐらいの道のりです。
この辺はバスや電車が多く走っているのですが、あいにく会社までの路線が遠回りになるため自転車で通勤しています。
会社近くの踏切では緑色で変わった形。
そう、正面から見ると台形の角を丸くした、三両編成の可愛い電車がゆっくり通り過ぎてゆきます。
踏切を渡り小さなトンネルをくぐり抜けると、くねくね曲がった細い道が長く続きます。
方側には整備された水散策路が流れ、道伝いに続く木々が屋根のように覆いかぶさると、その隙間から照らす夕方の優しい日差しは、私の帰宅時間を楽しいものに変えさせます。
そこを抜け道幅が少し広がった所で、今度は長い登り坂になります。
この辺では桜の名所で、有名な坂のようです。
その坂を登りきった所に、私の住むアパートが有ります。
郵便受けを急いで確認し玄関のカギを開けると、手を洗うことよりも先に、ミーコの居るノートを開いていました。
「ミーコ、ただいまー」
少し上達した料理を描いてあげられることの喜びから、顔が微笑んでいたのかもしれません。
「ミヨコ、おかえりー」
ミーコも私の顔を見ると、笑顔で迎えてくれています。
帰宅後は物事の合間合間にノートを覗き込み、ミーコと目が合うと笑顔になっている私が居ました。
たわいのない会話。今日あった出来事をいつの間にか話すようになっていて、まるで家族と居るようでした。
いえ、私は成長するに連れ両親とも会話が出来ていなかったので、正確には幼少期の自分に戻ったようです。
今日覚えたての料理をノートに描くと、それを見たミーコは喜び美味しそうと言ってくれました。
食事をしているミーコを見て幸せな気分になりましたが、果たして作画の改善で、食事の味が変わったかは少し疑問に思いました。
私達の会話は続き深夜十二時に近づいた頃、しゃべり疲れたのかミーコは寝てしまいました。
私はミーコの寝顔を見ながら、色々なことを考えていました。
このノートは一体なんなのだろう。本当に魔法のノートなのだろうか? それともミーコがノートの妖精か何か? 事例の無いこのことに、理解が出来ません。
厚みの有るノートなのに、最初の一ページ分の狭い空間に居続けるのでしょうか。
「可哀想……」
思わず声に出してしまいました。
考えてはいけないことと思いながらも、柵に入れられた動物を連想してしまいました。
ミーコだって別の場所や、景色を眺めたいはずです。
せっかく私の側に現れてくれたのだから、出来る限りの幸せをあげたい。
ミーコと二人なら青空や夜空、山や海を見て、共感してみたい。
でもどうしたらいいのだろう。……私は彼女に何をしてあげられるのだろうか?
そんな疑問でノートを見つめていた私でしたが、その考えはいつしか、ミーコへの心配事に変化していきました。
会社に出勤している間、一人ぼっちでは寂しいのではないか?
だったら、日頃からノートを持ち歩こうか?
でも、誰にも見られることなく、ノートを開き喋る時間が持てるだろうか?
先ほどまでの幸せな気分は完全になくなり、不安な気持ちだけがぐるぐる駆け巡ります。
悪いことばかり連想してしまい気持ちがつらくなると、目の前の現実から逃げる思いで、ノートを閉じようとしました。
その時です。ミーコに異変が起きました。
だんだんミーコの色が薄くなり始めたのです。
最初は目の錯覚だと思い瞬きをしたりしていましたが、色は段々薄くなり消えて行きます。
あれ、なんでだろう?
この辺はバスや電車が多く走っているのですが、あいにく会社までの路線が遠回りになるため自転車で通勤しています。
会社近くの踏切では緑色で変わった形。
そう、正面から見ると台形の角を丸くした、三両編成の可愛い電車がゆっくり通り過ぎてゆきます。
踏切を渡り小さなトンネルをくぐり抜けると、くねくね曲がった細い道が長く続きます。
方側には整備された水散策路が流れ、道伝いに続く木々が屋根のように覆いかぶさると、その隙間から照らす夕方の優しい日差しは、私の帰宅時間を楽しいものに変えさせます。
そこを抜け道幅が少し広がった所で、今度は長い登り坂になります。
この辺では桜の名所で、有名な坂のようです。
その坂を登りきった所に、私の住むアパートが有ります。
郵便受けを急いで確認し玄関のカギを開けると、手を洗うことよりも先に、ミーコの居るノートを開いていました。
「ミーコ、ただいまー」
少し上達した料理を描いてあげられることの喜びから、顔が微笑んでいたのかもしれません。
「ミヨコ、おかえりー」
ミーコも私の顔を見ると、笑顔で迎えてくれています。
帰宅後は物事の合間合間にノートを覗き込み、ミーコと目が合うと笑顔になっている私が居ました。
たわいのない会話。今日あった出来事をいつの間にか話すようになっていて、まるで家族と居るようでした。
いえ、私は成長するに連れ両親とも会話が出来ていなかったので、正確には幼少期の自分に戻ったようです。
今日覚えたての料理をノートに描くと、それを見たミーコは喜び美味しそうと言ってくれました。
食事をしているミーコを見て幸せな気分になりましたが、果たして作画の改善で、食事の味が変わったかは少し疑問に思いました。
私達の会話は続き深夜十二時に近づいた頃、しゃべり疲れたのかミーコは寝てしまいました。
私はミーコの寝顔を見ながら、色々なことを考えていました。
このノートは一体なんなのだろう。本当に魔法のノートなのだろうか? それともミーコがノートの妖精か何か? 事例の無いこのことに、理解が出来ません。
厚みの有るノートなのに、最初の一ページ分の狭い空間に居続けるのでしょうか。
「可哀想……」
思わず声に出してしまいました。
考えてはいけないことと思いながらも、柵に入れられた動物を連想してしまいました。
ミーコだって別の場所や、景色を眺めたいはずです。
せっかく私の側に現れてくれたのだから、出来る限りの幸せをあげたい。
ミーコと二人なら青空や夜空、山や海を見て、共感してみたい。
でもどうしたらいいのだろう。……私は彼女に何をしてあげられるのだろうか?
そんな疑問でノートを見つめていた私でしたが、その考えはいつしか、ミーコへの心配事に変化していきました。
会社に出勤している間、一人ぼっちでは寂しいのではないか?
だったら、日頃からノートを持ち歩こうか?
でも、誰にも見られることなく、ノートを開き喋る時間が持てるだろうか?
先ほどまでの幸せな気分は完全になくなり、不安な気持ちだけがぐるぐる駆け巡ります。
悪いことばかり連想してしまい気持ちがつらくなると、目の前の現実から逃げる思いで、ノートを閉じようとしました。
その時です。ミーコに異変が起きました。
だんだんミーコの色が薄くなり始めたのです。
最初は目の錯覚だと思い瞬きをしたりしていましたが、色は段々薄くなり消えて行きます。
あれ、なんでだろう?