ミーコの願い事
雷と救急車
会社にいる間は帰宅時間が早くこないかと、そればかり考えていました。
そんな考えをするのは、入社してから初めてなことかもしれません。
会社が好きなわけではありませんが、仕事が終わってから特にすることのなかった私にとって、一日の時間はどうでも良いことに感じていたからだと思います。
昼間なのに外は暗く、室内を照らす明かりは青白い蛍光灯の光のみです。
窓に当たる雨粒が少しずつ増えていくと、遠くの空からゴロゴロっと低い音が、静かな室内に聞こえました。
「今、雷なったよねー」
少し離れた席から声が聞こえます。
話しているのは、デザイン担当の石井さんでした。
石井さんはデザイン担当の中で一番若い女性で、少し言葉使いがきつく感じます。
年齢は私より二歳位年上でしょうか。着ている衣服はファッション雑誌に出てきそうな、目新しい物を好んでいるようです。
一方の私は、絵を描くこと意外興味がなかったので、衣服には全くの無頓着です。
衣服など何時でも変えられる、いずれデザインの担当になってからでも遅くは無いと思っていますが、職業と衣服は関係なく、理由を付けて後回しにしていることもわかっています。
弱いくせに一人で強がっているみたいで自分が嫌いになり、今も自己嫌悪を味わっています。
そんな劣等感からでしょうか、私は入社当時から石井さんのことを否定した目で見ていました。
空がひかり、雷の音が大きくなると、石井さんの声も大きくなっていきます。
「やだー怖いー」
耳を塞ぎ目は閉じています。
石井さんが雷を苦手なことは以前からなんとなく知っていたのですが、ここまで嫌いだとは思ってもいませんでした。
呆然と見ていた私に、森川さんがチョンチョンっと指で肩を突き、話してきました。
「私も雷苦手だけど、彼女は特に嫌いみたい。田中さんは大丈夫?」
「はい、私は大丈夫です」
イケないっと思いながらも、会話を終わらせてしまう返事しか出来ません。
私はコミュケーションを取れなかったことに、反省をしてうつ向いていました。
そんな私を見てか、森川さんは気を使ってさらに言葉を引き出そうと会話を続けます。
「ねえ、ねえ、田中さんの嫌いなものってなーに?」
森川さんの気遣いに答えようと、私なりに頑張り言葉を多めに答えました。
「虫が苦手です。……特に夏に出る黒いのが」
いつもなら人付き合いと考えが直ぐに浮かぶのですが、何故かその時は浮かぶことも無く、自然にこのような言葉が出ていました。
「私も駄目、怖いよねー言葉に出すのも苦手。夏は夜の玄関先で弱っているセミも駄目。あの子たち動かないと思って近づくと、突然激しい動きするでしょう」
少しユーモラスな表現で喋ってくれる森川さんに、少し微笑みうなずくことが出来ていました。
会話の途中で大きな雷の音がすると、ほんの一瞬だけ社内の明かりが消え、全員で蛍光灯を見上げていました。
「今の絶対近くに落ちたよ」
そんな声も聞こえます。
「もう会社から帰れないよー」
石井さんは更に怖がり、椅子に座りながらも姿勢を低くしていました。
ミーコは大丈夫かな?
雷に怖がる石井さんを見て、ミーコが心配になっていました。
そんな考えをするのは、入社してから初めてなことかもしれません。
会社が好きなわけではありませんが、仕事が終わってから特にすることのなかった私にとって、一日の時間はどうでも良いことに感じていたからだと思います。
昼間なのに外は暗く、室内を照らす明かりは青白い蛍光灯の光のみです。
窓に当たる雨粒が少しずつ増えていくと、遠くの空からゴロゴロっと低い音が、静かな室内に聞こえました。
「今、雷なったよねー」
少し離れた席から声が聞こえます。
話しているのは、デザイン担当の石井さんでした。
石井さんはデザイン担当の中で一番若い女性で、少し言葉使いがきつく感じます。
年齢は私より二歳位年上でしょうか。着ている衣服はファッション雑誌に出てきそうな、目新しい物を好んでいるようです。
一方の私は、絵を描くこと意外興味がなかったので、衣服には全くの無頓着です。
衣服など何時でも変えられる、いずれデザインの担当になってからでも遅くは無いと思っていますが、職業と衣服は関係なく、理由を付けて後回しにしていることもわかっています。
弱いくせに一人で強がっているみたいで自分が嫌いになり、今も自己嫌悪を味わっています。
そんな劣等感からでしょうか、私は入社当時から石井さんのことを否定した目で見ていました。
空がひかり、雷の音が大きくなると、石井さんの声も大きくなっていきます。
「やだー怖いー」
耳を塞ぎ目は閉じています。
石井さんが雷を苦手なことは以前からなんとなく知っていたのですが、ここまで嫌いだとは思ってもいませんでした。
呆然と見ていた私に、森川さんがチョンチョンっと指で肩を突き、話してきました。
「私も雷苦手だけど、彼女は特に嫌いみたい。田中さんは大丈夫?」
「はい、私は大丈夫です」
イケないっと思いながらも、会話を終わらせてしまう返事しか出来ません。
私はコミュケーションを取れなかったことに、反省をしてうつ向いていました。
そんな私を見てか、森川さんは気を使ってさらに言葉を引き出そうと会話を続けます。
「ねえ、ねえ、田中さんの嫌いなものってなーに?」
森川さんの気遣いに答えようと、私なりに頑張り言葉を多めに答えました。
「虫が苦手です。……特に夏に出る黒いのが」
いつもなら人付き合いと考えが直ぐに浮かぶのですが、何故かその時は浮かぶことも無く、自然にこのような言葉が出ていました。
「私も駄目、怖いよねー言葉に出すのも苦手。夏は夜の玄関先で弱っているセミも駄目。あの子たち動かないと思って近づくと、突然激しい動きするでしょう」
少しユーモラスな表現で喋ってくれる森川さんに、少し微笑みうなずくことが出来ていました。
会話の途中で大きな雷の音がすると、ほんの一瞬だけ社内の明かりが消え、全員で蛍光灯を見上げていました。
「今の絶対近くに落ちたよ」
そんな声も聞こえます。
「もう会社から帰れないよー」
石井さんは更に怖がり、椅子に座りながらも姿勢を低くしていました。
ミーコは大丈夫かな?
雷に怖がる石井さんを見て、ミーコが心配になっていました。