ミーコの願い事
 みんながみんな同じではない。
 現に大人になっても苦手な人もいるのですから、雷の音が怖くない子供がいてもおかしくありません。
 自分の中で納得したのですが、何故か心配であることが先走ってしまい、半信半疑の気持ちで追求をしてしまいます。

「で、でも一人で居る時は、怖かったでしょ。あんな大きな音だもん」

 幼い子供のお留守番です。
 外から聞こえる大きな音は、寂しい気持をより不安にさせると思いました。
 戸惑いながら話す私に、ミーコは笑顔で答えます。

「一人の時は、お外の音聞こえないよ」

 その言葉の意味は理解出来ないでいましたが、思いつくまま、そっとノートを閉じ呼びかけてみました。

「ミーコ、ミーコ?」

 名前を読んだ後、ノートを広げ聞いてみました。

「ミーコ聞こえるよね?」

 ミーコは右手を顔の前に持って行き、親指と人差し指の感覚を少し開けると、遠慮しがちに答えます。

「ちょっと」

 ミーコのその言葉に、ノートを閉じると音が少し聞こえなくなることを理解しました。

「じゃあ、今度はミーコが喋ってみて」

 私は試してみたくなり、ノートを閉じました。

「あーあーあーあー」 

 かすかにノートから発している、ミーコの声が聞こえます。
 ノートを開くとその声は通常どおりの声で聞こえ、私達は目を合わすと、笑い出しました。

「うっふっふっふっふっ」「あっはっはっはっはっ」

 童心に戻り、今を楽しみます。

 もう一度ノートを閉じると、ふざける口調で呼びかけていました。

「ミーコさん、ミーコさん、聞こえますか?」

 どんな反応が見られるか期待をしながらノートを開いてみると、ミーコは目をつむり手を耳元に当て澄ました表情で答えます。

「聞こえますよー」

 面白くなりまたノートを閉じると、今度はノートからミーコの声がかすかに聞こえてきました。

「ミヨコさん、ミヨコさん、聞こえますかー?」

 私はノートを開くと、目を閉じ顔を振りながら、反対の言葉で答えました。

「聞こえませんよー」
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