ミーコの願い事

色えんぴつ

 朝になると、ミーコの部屋にテーブルと食事を描き、左の空白のページに公園の絵を描きました。
 少しでもミーコが遊べるようにブランコに砂場。滑り台を描いたのですが、一人で寂しい思いをしていると考えると、幼少期の自分と重ねてしまいます。

 私はミーコを起こし、会社に出勤することを告げて出かけました。
 
 会社に着いてからも、頭の中はミーコが寂しくないようにどうすればいいか、またどうしてページを移動したのか考えていました。
 ミーコが寂しくないようにする対策案は多少なりに浮かぶのですが、どれも良い考えだと思えませんでした。
 特にページを移動したことは、全くわからないままでいます。
 
 悩んでいる? ぼーっとしている私の前に、突然あるものが視界に入ってきました。

「色鉛筆のセット、良かったら使いませんか? お得意さんからいただいたんだけど」

 そう語り差し出してくれたのは、営業の杉田さんです。

 杉田さんは同期で同い年の男性です。明るい性格で他の人と会話をしている時も、よく笑い声が聞こえます。
 無口の私に気を使ってか、時々しゃべりかけてくれます。
 気軽には声がかけづらいのでしょうか? 敬語と親しい口調が入り混じったものになっています。

 杉田さんが差し出した色鉛筆は、外国製のようです。
 木製の木箱に入り、豪華な作りになっていました、
 今まで知っているものとは違い、どこか大人の雰囲気を感じます。

「あ、ありがとうございます」
 
 お礼を言うものの、突然だったこともあり、表情に出して感謝を伝えることが出来ませんでした。
 自分でも失礼だと感じながらも、訂正することなく澄ました表情をしてしまいます。

「いやいや、貰い物なのですから。あっ、そうそう。蓋を開けてみて」
 
 私は言われるまま蓋を開けてみました。
 蓋を開けると同時に、上段部分が上がりながら後ろにスライドします。
 下段目も取りやすいように、細工がしてありました。

「すごい、二段重ねになってる」

 予想していなかった構造に、思わず声が出てしまいました。
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