ミーコの願い事
「すごいのは見た目だけじゃないんですよ。僕も試しに塗ってみたけど、面白い感覚を味わえると思いますよ」
私は今度こそ、笑顔でお礼を言おうと意識しましたが、間を割るように、石井さんの声がかかります。
「杉田くん、そろそろ行くよ」
その声色に、浮かれた気持ちは消え去り、少し心臓が縮むようでした。
「これから、お客さんの所で打ち合わせなんだ。それじゃ」
軽く手を上げ、いそいそと出かけて行きました。
私は残念な気持ちに動揺しないよう装っていましたが、隣にいた森川さんは、そんな気持ちを吹き飛ばす発言をします。
「プレゼント? 杉田くんも正直と言うか、とっても真っ直ぐね」
意味深い言葉に意識すると、顔が熱くなっていました。
恥ずかしい、そんなんじゃないのに。
否定する気持ちの中、隣にいる森川さんのことも気になります。
森川さんは、あのノートのこと何か知っているのでしょうか?
ノートのことを聞いてみようか?
そう思いながらも言葉に出せない私がいます。
朝の時点からそんな考えを持って業務をしていましたが、その日は相談が出来ないまま、時間が過ぎ去ってしまいました。
帰宅後もミーコを一人にさせておくことと、ページの移動について悩んでいました。
出来るだけミーコに不安な気持ちを与え無いようにするため、表情に出さないよう、心がけていました。
そして楽しい話題をしようと考える私にとって、今日いただいた色鉛筆は救世主的な存在です。
せっかくもらったんだから、ミーコと楽しもう。