ミーコの願い事
昔この会社にいた人の話で、ノートを見つけた資材置き場から武骨なペンが一本出てきたそうです。
ペンは描きたいことを思った以上に再現してくれるので、最初は手に良くなじむと思い使っていたのですが、ある日そのペンを使い文書を書くと、頭で考えていることとは違う心で思っている言葉、文字に変化していったそうです。
その文書は持ち主を幸せにしてくれたので、ペンに感謝し肌身離さず持っていたそうですが、突然消えるように失くなってしまったそうです。
私はその話を聞き、そのペンもこのノートと同じ魔法のような力があったのではないかと、考えました。
そして改めてノートに描いたミーコが動き喋ること、可哀想で一人にさせておけないことを伝えました。
森川さんは真剣な表情で納得すると、答えてくれます。
「田中さんにしか見えないのなら、会社に持ってきても大丈夫じゃない? 私このノートを見た時思ったの、不思議なペンと何か関係が有るんじゃないかと、すごい体験をしているのだから、今を大事にしてみたら」
私にくれたその言葉に、正直な気持ちがこぼれていました。
「よかった、嬉しいです」
「私も嬉しいから、だって初めて田中さんの心からの声が聴けたような気がするし。それにこの絵、ずいぶん優しい絵を描くのね」
そう言って森川さんは、ミーコのいる町並みの絵を見ていました。
そこには私にしか見えないミーコが、安心した表情を向けています。
ミーコがこのままページを移動し続け、最終的に消えてしまうのではという悩みは、ノートから距離を取りミーコに聞こえないよう、森川さんに相談しました。
不思議な現象だけに二人ともわからないでいましたが、ただ相談したことで最終ページになっても消えるとは決まっていないと、何故か前向きな考えも出来るようになっていました。
森川さんは、お昼時間が終わってもノートのことを考えてくれました。
特に雨の日対策として、ノートが濡れないようビニール製のカバンを、家から持ってきてくれると言てくれました。
私は自分のことのように考えてくれる森川さんが、とても大きな存在であり相談して良かったと思っていました。
帰宅してからは今日の出来事、森川さんを見てどう思ったかなどの話をしていました。
ミーコは笑いながら、ビックリしたと話しています。
私もこんなに人と親しく会話が出来たことに、自分自身驚き今も不思議な気分です。
ミーコの部屋に置かれたスケッチブックに目を移すと、絵が描かれていました。
東京タワーとその隣に、同じ大きさの女性の絵が描いてあります。
「これは、この建物」
ノートの中の東京タワーを指差すと、ミーコは元気よくうなずき答えました。
「うん、そうだよ」
「隣の女性はミーコ?」
一生懸命に描いたと思われるその人物を聞くと、少し照れ臭そうに話します。
「これ……ミヨコ」
私は思いがけない言葉に、嬉しくなりました。
その日の夜も、ミーコはページを移動しました。
可哀想なことに、せっかく描いたスケッチブックは残したままです。
そのことに気づくと、予測出来ていなかった自分の浅はかさに、惨めな思いを感じていました。
私は日課のようにミーコの移動を見届け、ノートに部屋とスケッチブックを描き足し就寝します。
でも本当にミーコを悲しませていたことに気づくのは、もう少し後のことでした。
ペンは描きたいことを思った以上に再現してくれるので、最初は手に良くなじむと思い使っていたのですが、ある日そのペンを使い文書を書くと、頭で考えていることとは違う心で思っている言葉、文字に変化していったそうです。
その文書は持ち主を幸せにしてくれたので、ペンに感謝し肌身離さず持っていたそうですが、突然消えるように失くなってしまったそうです。
私はその話を聞き、そのペンもこのノートと同じ魔法のような力があったのではないかと、考えました。
そして改めてノートに描いたミーコが動き喋ること、可哀想で一人にさせておけないことを伝えました。
森川さんは真剣な表情で納得すると、答えてくれます。
「田中さんにしか見えないのなら、会社に持ってきても大丈夫じゃない? 私このノートを見た時思ったの、不思議なペンと何か関係が有るんじゃないかと、すごい体験をしているのだから、今を大事にしてみたら」
私にくれたその言葉に、正直な気持ちがこぼれていました。
「よかった、嬉しいです」
「私も嬉しいから、だって初めて田中さんの心からの声が聴けたような気がするし。それにこの絵、ずいぶん優しい絵を描くのね」
そう言って森川さんは、ミーコのいる町並みの絵を見ていました。
そこには私にしか見えないミーコが、安心した表情を向けています。
ミーコがこのままページを移動し続け、最終的に消えてしまうのではという悩みは、ノートから距離を取りミーコに聞こえないよう、森川さんに相談しました。
不思議な現象だけに二人ともわからないでいましたが、ただ相談したことで最終ページになっても消えるとは決まっていないと、何故か前向きな考えも出来るようになっていました。
森川さんは、お昼時間が終わってもノートのことを考えてくれました。
特に雨の日対策として、ノートが濡れないようビニール製のカバンを、家から持ってきてくれると言てくれました。
私は自分のことのように考えてくれる森川さんが、とても大きな存在であり相談して良かったと思っていました。
帰宅してからは今日の出来事、森川さんを見てどう思ったかなどの話をしていました。
ミーコは笑いながら、ビックリしたと話しています。
私もこんなに人と親しく会話が出来たことに、自分自身驚き今も不思議な気分です。
ミーコの部屋に置かれたスケッチブックに目を移すと、絵が描かれていました。
東京タワーとその隣に、同じ大きさの女性の絵が描いてあります。
「これは、この建物」
ノートの中の東京タワーを指差すと、ミーコは元気よくうなずき答えました。
「うん、そうだよ」
「隣の女性はミーコ?」
一生懸命に描いたと思われるその人物を聞くと、少し照れ臭そうに話します。
「これ……ミヨコ」
私は思いがけない言葉に、嬉しくなりました。
その日の夜も、ミーコはページを移動しました。
可哀想なことに、せっかく描いたスケッチブックは残したままです。
そのことに気づくと、予測出来ていなかった自分の浅はかさに、惨めな思いを感じていました。
私は日課のようにミーコの移動を見届け、ノートに部屋とスケッチブックを描き足し就寝します。
でも本当にミーコを悲しませていたことに気づくのは、もう少し後のことでした。