ミーコの願い事
「どっ、どうしたのミーコ?」

「どうしてお母さんは、クッキー食べないの?」

 ミーコはいつの日からか、私のことをお母さんと呼ぶようになっていました。
 呼ばれた当初は恥ずかしくも感じましたが、今は普通のことのようになっています。

「お母さんのクッキーは今無いから、でも明日買うから大丈夫だよ」

 瓦せんべいで満足していたことと、無いものはしょうがないと諦め、そう答えました。
 するとミーコは寂しそうな表情で見つめ話します。

「お母さんが可哀想だから、ミーコも食べない」

 持っていたクッキーをお皿に戻し、食べるのを止めてしまいました。
 そんな優しいミーコを見て、笑いながら話します。

「大丈夫だよ。瓦せんべいもあるし、気にしないで食べて」

 言葉に出しながら心の中で思っていました。
 ミーコは子供ながら気を使い、遠慮して食べるのを止めています。

 なんて優しい気持ちを持った子だと思うと、いとおしくてたまりません。
 私は嬉しくなり、今日は我慢っと自分に言い聞かせていました。
 するとミーコは、そんな私を見透かしてか、確信をつく発言をしました。

「本当はクッキーが食べたいのに瓦せんべいで、ごまかしているんでしょ?」

 疑いの眼差しで見ています。

「そ、そんなこと無いよ、瓦せんべいだって二枚もあるし、お腹いっぱいになっちゃう」

 慌てながら強引にごまかしていましたが、理由になっていません。

「ミーコは瓦せんべいもクッキーも食べれるのに、お母さんは瓦せんべいしか食べられないなんて可哀想」

 今度は悲しい顔をして、うつ向きました。
 私はミーコを安心させるため瓦せんべいを一口食べ、無理に明るく装いました。

「あー瓦せんべい、おいしい!」

 するとミーコはうつ向いたまま、スーッと、クッキーの乗ったお皿を、自分から遠ざけるように移動させます。
 私はこんな小さな子に心配させては駄目だと思いクッキーが本当に無いか、徹底的に茶だんすの中を探すことにしました。
 台所に移動し茶だんすの中を探していると、ミーコの呼ぶ声が聞こえます。

「おかーさーん」

 部屋に戻り尋ねると、ミーコは瓦せんべいを持ち、ほうばりながら話します。

「寂しいからミーコも側に行く」

 私は再度ノートを持って、台所に移動しました。 

 ミーコの居るページを広げた状態で立たせ、閉じないように今日購入したカップ麺で、ノートの端を抑えました。
 するとカップ麺を見て、ミーコが指を差し話します。

「あっ、お母さんの好きなやつだ」

 私は食事の用意が面倒でよくカップ麺を食べるのですが、理由が教育上良くないと思いミーコには好物であると説明をしていました。

「うっうん、そうだね。お母さんの好きなやつだよね」

 後ろめたさを感じながら、戸棚の中身を取り出すと最初に出てきたのは同じカップ麺でした。
 無造作にしまっていたから、購入していたことを忘れていたと思いました。
 それを見てミーコは再び指を差します。

「あっ、またお母さんの好きなやつだ」

 気まずくなりながらも、ミーコの視界に入らないよう隠すように移動させました。

「お母さん、いっぱい購入しちゃった。欲張りだね」

 カップ麺のことはごまかし、戸棚の中を更に探し始めました。
 次に手にしたのはお茶の葉でした。

「何年前のだろう?」

 賞味期限を見ると、すでに過ぎています。
 古いけど飲めるのかなー? 開封はしていませんでしたが、かなり月日が経過しています。
 しかも別のお茶も、茶筒に入れている状態です。

 お茶自体は好きなのですが、ただ飲むたびにキュウスを洗う行為が面倒で、いつの間にか飲まなくなっていました。
 このお茶にたどり着くまで後何年もかかってしまうのだろう、今後も飲まないことを考えるといけないことと思いながらも、捨てることにしました。

「ごめんなさい」

 ミーコはその言葉を聞くと、不思議そうな顔で問いかけます。
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