ミーコの願い事

聞きたくありません

 暑い夏が過ぎ、朝と夜は時折肌寒く感じる季節になりました。
 目を覚ましても布団が心地よく、起きるのがもったいない気分になります。
 時計を見ると五時三十分。

 まだ早いけど、起きようかな。

 会社には通常、七時五十分ぐらいに家を出るので、ゆっくり朝食をとることにしました。
 冷蔵庫から昨晩作り置いたサラダとミルクを出し、テーブルに向かいます。
 何気なく机に置いてあるノートを開くと、ミーコはベッドに座っていました。

 あれ、もう起きている。

「おはよう、今日は早いね」

 声をかけても、ミーコは目をつむったまま黙り、前や後ろ、そして左右に揺れています。

 まだ眠いのかな? 

 普段ならまだ寝ている時間です。
 でもせっかくの早起き、一緒に朝食を食べようと誘ってみました。

「ミーコ、少し早いけど朝食食べる?」

 その問いかけにミーコは、不機嫌な顔を浮かべ話しました。

「やっつけたの」

 何のことでしょう? 意味不明な発言に何かと聞き間違えだと思い尋ねました。

「えっ何が?」

 ミーコは目をつむりながら、今度は言葉をぶつけるように力強く聞いてきます。

「やっつけたの?」

 同じ言葉です。

 前日に話した内容を思い出してみたのですが、検討がつきません。

「えっ、何のこと? ミーコどうしたの?」

 ミーコは少しうなりながら、考えています。

「うーーん、何でもない」

 そう話し、再び寝てしまいました。
 何だったんだろう? 寝ぼけていたのでしょうか? 始めは驚きましたが、冷静に考え変な夢でも見たのではないかと推測します。

 私が何かをやっつける、一体どんな内容の夢なのでしょうか? その光景を想像すると可笑しくなり、思うようにミーコの朝食が描けません。
 その日の私は、ミーコの言葉を時おり思い出し、笑ってしまうほどでした。
 
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