ミーコの願い事

大事な存在

 翌日目を覚ますと、頭が重く脱力を感じていました。
 布団から起き上がると、喉や鼻の奥側に痛みを感じ、どうやら風邪をひいたみたいです。

「しまったミーコの食事」

 慌てる気持ちに反しゆっくりな動作で、机の上に置いてあったノートを広げると、ミーコはすでに起きていました。
 ノートには何も描かれていない、空白の状態です。

 部屋も食事もベッドさえも無い中、ミーコは立ちすくんでいました。
 目を覚ましたミーコが、何もない寂しい場所に居たかと考えると、自分の失態に反省をしていました。

「ごめんなさい。遅くなって、本当にごめんね」

 慌て謝りながらも表情に出ていたのでしょうか、体調が悪いのを感じ取ってくれたみたいです。

「お母さん、大丈夫?」

「うん……大丈夫だよ」

 笑顔を装い、急いでミーコの部屋と食事を描きます。
 描き上がる食事をボー然と見つめると、手をつけずに、心配そうに私に目を移しました。

「私も食べるから、安心して」

 台所に置いてあった食パンをお皿に乗せ持ってくると、ミーコに見せるようにして、一口含ませました。
 不安な表情残したまま、ミーコもやっと食事を口にします。
 外は雨が降っていて薄暗い部屋で過ごす一日は、意味もなく悲しい気持ちにさせます。

「今日の天気は雨か」

 昨晩の杉田さんの言葉が気になり、そんなため息のような独り言が出てしまいます。

「お母さん、外は雨が降っているの」

 ミーコも食事をしながら、話しかけてきました。

「うん、雨が降っているよ」

 私はパンをお皿に起くと、ノートの中に初めての雨を降らせました。
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