ミーコの願い事
 ミーコは部屋から顔を出し、空中に浮ぶ雨を見上げています。
 しばらくすると、ノートに描いた雨が動き出し、ミーコの顔に落ちました。

「きゃっ、お水みたい」

 水たまりを作り。カエルを描き。
 部屋の中には、長靴と雨合羽を準備しました。
 残念ながら思った通り、カエルは動かずただの置物のようです。

「雨の日は初めてだもんね、食事が終わったら部屋から出てみる?」

 ミーコは何故か、照れるようなしぐさを見せ、小声で話します。

「出てみようかなー」

 今日は休日ではありますが、動く気力がありません。
 
 早く風邪を直し、明日は会社に行かなきゃ。
 
 自分に言い聞かせながら、ノートを抱えるよう持ち、再び布団の中で休むことにしました。

 翌日、時間どうりに起床すると、いつものように顔を洗い、いつものようにノートにミーコの朝食を描きます。
 ですが、会社に行きたくないと思う、弱気な私がいます。

 昨日までは風邪を直し頑張ろうと考えていたのですが、いざ当日になると杉田さんに顔を合わせづらいと思う気持ちが、強くなっています。

 体温計で熱を計りながらも、考えることは後ろ向きなことばかりです。

 あの場から逃げ出すように別れてしまったのは、失礼だよな。
 だけど、何故杉田さんにもミーコが見えるのだろう。

< 82 / 115 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop