ミーコの願い事
「可愛いじゃない」

 聞こえた声は森川さんでした。
 振り返るとそこには営業さん以外の全員が立っていました。

「おっ黒猫かー、いいねー」

 桜井さんは黒猫を、気に入ってくれたようでした。
 私はその言葉に安心し、笑みが溢れます。
 この目付きの悪い猫は、桜井さんを参考に出来たキャラクターだったからです。

 やせ型の体に手足を長くし、ボーイシュにズボンを履かせた女の子です。
 全体が黒でまとめて居るため、耳や目元に紫色を使い、アクセントをつける意味で、真珠のネックレスをしています。

「こっちの小太りも良くない」

 それまで覗き込むようにしていた森川さんは、原案をおもむろに専務から取り上げていました。
 一瞬凄く小さな声で、専務の「あっ」っと言う、声がしましたが、みなさんはそのことを気にせず、いつの間にか中心は森川さんになっていました。

 社長は指差し話します。

「小太りの子は、キャラクターに個性が有って良いじゃない」

 その言葉に、桜井さんも返します。

「黒猫も存在感ありますよ」

「黒猫はガラ悪いからダメですよ、もっと可愛くしたほうがいいんじゃないですか」

 石井さんも参加し始めました。
 話しの輪から取り残された専務の顔を見ると、少し困った表情をしながらも笑っていました。

「評判良いみたいだからこの原案を、お客さんに提出するよ」

 専務の前向きな言葉を聞き、私は安心をしていました。


 
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