ミーコの願い事
 咄嗟に出たその言葉と行動は、無力のミーコに何か悪いことをしているのではないかと考えてしまったからです。
 私はミーコが心配になり急いでノートを開き、目を移しました。

「ミーコ、大丈夫?」

 ミーコはキョトンとした表情で、部屋の中に立っています。
 そして足元には変な形の絵が、描かれていました。

 あれ、何だろう? 

 私は想像と違っていた事態に、少しずつ誤解をしてしまったことに気付きました。

「イテッテッテ」

 痛がる杉田さんの声で我に帰ると、慌てて理由を話しながら手を差し出しました。

「ごめんなさい、私、ミーコが心配になってしまい」

「いえ、説明していない僕が悪いから、緊張してしまって」

 手のひらをこちらに見せ、大丈夫とゼスチャーしながら杉田さんは立ち上がると、ペンを入れた理由を説明しました。
 
 森川さんからノートのことを聞いた時、この世界には不思議なことが沢山あると聞いたそうです。

 花をヒトデと勘違いする美人な女性や? 
 子供を白髪にするおばさん妖怪? 
 そして人格を判断するノートで生きる女の子?

 彼女ににまず気に入られるようになるのが、第一条件だと言われたそうです。
 その条件を解決出来なければ、今後私とお付き合い出来るチャンスは無くなり、真実の愛も二度と手にいれることは出来ないと言われたそうです。

 私はその話を聞き、何のことかさっぱりわかりませんでした。

「僕わからなかったから、相談したんだ。ノートの彼女に気に入られるにはどうしたらいいか。そうしたら、お花などのプレゼントをあげて喜ばせてはどうかと、アドバイスをもらって」

 話を聞くうち森川さんは私には力になってくれるのではと言う理由でしたが、杉田さんには面白がって、違う内要の話をしたようです。
 そのことに気付き、恥ずかしくなりました。

 そして、ノートに描かれた変な絵は、花だとわかりました。
 植木鉢にも入っていない、部屋の床から生えるその花は、形からして多分チューリップだと思われます。
 私は何だか可笑しくなり、笑ってしまいました。

 杉田さんも、そんな私につられ笑っています。
 ノートを見ると花には見えない杉田さんの描いた絵を、ミーコは引っこ抜いていました。
 その日、改めて不思議なノートの話を、杉田さんにしました。

 そして杉田さんからは、私に好意を持ってくれていることを聞きました。

 その日の夕日は、私達をいつもより、赤く染めているように感じました。
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