ミーコの願い事
 不思議に思い再びノートを開くと、ミーコは目を閉じて声を出しています。
 そして両手で耳を閉じたり開いたりの、動作を繰り返していました。

「ミーコ? ……ミーコ?」

 私の呼びかけに、やっと気付いたように、片目だけ開けています。
 奇妙な言動に、疑問に思ってしまいます。

「何しているの?」

「あのね、こうするとね、ピーポーピーポーが誤魔化せるの」

「なーにそれ?」

「スギタが教えてくれた」

 突然の登場人物に驚きました。

「杉田さんとしゃべったの? いつ?」

「お母さんがトイレに行っているとき、森川さんも居た」

「森川さんもミーコが見えたの?」

 少し期待を持ち、聞いてみました。

「違うよ、森川さんはミーコが見えないみたい、でもこんにちはしてた」

 私は改札口を抜けるとベンチが設置していることを思い出し、そこに腰を掛け、詳しく話を聞こうと思いました。
 ベンチの近くには数人の人達が集っていたので、私達は意識し小声になります。

「ミーコ。もう少し待とうね、今近くに人が居るから」

 ミーコは人差し指を口元に運び、シーっと囁いています。

 そんなやり取りの中、先ほどの事故の話が聞こえてきました。

「さっきの救急車、喧嘩だったみたいだぜ」

 何だか物騒な話が聞こえてきます。

「病院に運ばれた男、かなりの大柄だったじゃん」

 私とミーコはその話が気になり、聞き耳を立てていました。

「しかも相手はきゃしゃな体系でさ、目が鋭かったらしいぜ」

 気が付くと私達はすでに、その会話の方に顔を向けて聞いている状態です。 
 そして、その人達が居なくなると、しゃべらずにはいられません。
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