ミーコの願い事
 商店街を抜けしばらく歩くと、住宅街を歩いていました。
 その場所は私の住むアパートの近所では有りましたが、歩いたことの無い場所でした。

 見慣れない街並みに、不安な気持ちです。
 桜井さんは何かを探しているように、キョロキョロしながら歩いています。

「一体、何を探しているんだろう?」

 私は後をつけながら考えていると、桜井さんは足を止め住宅街の一角に有る、小さな公園の方を見ています。

 公園の入り口には、高校生位の女性が三人集まり、会話をしています。
 その方達はとても個性的な格好で、赤色で統一されたトレーナー上下を着ている人もいれば、みょうに大人びたタイトな長いスカートを履き、胸元の開いたシャツを着ている人もいます。

 中にはスクーターにまたがり、タバコを吸っている人もいます。

 怖いなー、これでは公園に子供が近づけないよー

 そんな若者を見て気付きました。
 まさか、探していたのは喧嘩の相手? 私は怖くなり、また電信柱の陰に隠れてしまいました。

「ミーコ、ごめん代わりに見て」

 私は桜井さんの方に背を向け、ノートを広げ再びミーコに見てもらいました。

「やだー、やっぱり桜井さん、スケ番が抜けきれないんだー」

 目を閉じそうつぶやくと、ミーコも驚いた口調で話します。

「三つ子の魂百までって、このことかなー」

 私はその発言が、引っかかりました。

「やだミーコ、似合わないよ! 誰に教わったの」

 私はミーコに似つかわしくない難しい言葉に、少し嫌な気持ちになりました。

「スギタが教えてくれた」

 ミーコは何のことかわからず、不思議そうな表情をしています。

「また杉田さん? 余り変なこと教えないでって、今度注意しなきゃ」

 別に会話することに不満はありませんが、面白がって変なことを教えていると考えると、不安になります。
 私はミーコに、再度問いかけました。

「他にはどんなこと聞いたの?」

「えーと、萩の花が咲く時に食べるのが、おはぎ。牡丹の花が咲く時は、ぼた餅」

 興味を持つ話題に、感心してしまいます。


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