ミーコの願い事
「あれから進展が無く、どうしていいかわからなのですが」

 杉田さんは私のことを相談するため、電話をかけているようでした。

「そっかー、進展が無く困っているの」

 森川さんは冗談みたいな行動にも動じず、相談に乗っています。
 高木さんは苦しそうに、笑いをこらえています。

 石井さんは、桜井さんと話しながら杉田さんの方を指差した後、私を指差していました。
 鈴野さんは現在の状況を紙に書き、社長に説明をしているようです。

 社長は書かれた内容を読み、小さな声で驚いていました。
 専務は……気に留めてない様子で下を向き、仕事をしています。

「もう一度誘ってみたら? 隣にいるわよ変わる?」

「ダメですよ、森川さんに相談しているところを田中さんや、みんなにバレないようにしているんですから」

 そう語りながら応接室の杉田さんは、ガラス越しにこちらを振り返りしゃべります。
 あちらからは見えないのですが、それに合わせるように全員が姿勢を低くしました。
 何で私まで。

 皆さんにつられて机の影に隠れてしまいましたが、隠れる必要はなかったのです。
 冷静さを取り装い机から顔を出すと、何故か専務も机の影から顔を出し、目が会ってしまいました。

「じゃあ、今度は偶然あったようにしてみたら」

「偶然……ですか」

「そーそこから田中さん……あの子に気に入られるようにすればいいんじゃないかな」

 森川さんはミーコのことは、誤魔化しながら会話をしてくれています。

「でもあまりお花は効果なかったですよ、田中さんも笑っていたし」

「そっかー他に気に入られるようにするには、どうすればいいかなー」

 アイデアに困っていると、石井さんがメモを持ってきました。
 森川さんはそれを受け取り、読み上げます。

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