家庭教師りな

第八話 描きたい

大阪の新幹線乗り場でりな達はまさみちに別れの言葉を告げた。
「みんな来てくれてありがとう」
まさみちは感謝の気持ちを述べた。
「次からはこういうことがないようにな」
たけしは笑って答えた。
「うん、わかっている東京へ戻る時は連絡をするね」
「うん、待ってる」
りなはるみに気になることを聞いた。
「るみも大阪に残るの?」
「うん、私は大阪でお父さんと暮らすことにしたよ。だからみんなとはここで別れ」
「そう、元気でね」
「うん、りなも元気にしてて」
なおこは泣きながらまさみちに別れの言葉を言った。
「(泣く)離れたくないよ……」
「別れるんじゃないから泣くなよ」
たけしが勇気づけた。
寂しげそうな表情をするるみにたけしが声をかける。
「あの……るみさん……僕と写真をお願いしてもいいですか?」
それを聞いたまさみちがみんなと写真を撮った。
りなはたけしとなおこに新幹線の出発を知らせる。みんな、笑顔で手を振り合った。
りなとたけし、なおこは新幹線に乗り、東京へ帰った。

夏休みが終わり、まさみちの件でだいぶ勉強が遅れたりなは、たけしの家庭教師を
しながら、勉強の遅れを取り戻そうとした。
家庭教師の仕事で宮本家を訪れたりなは、ドアを開けたとたん激しい口論を聞く。それは外国から戻ったさえ子と何か怒っている大輔と口論を止めようとするゆりの声だった。
「どうして途中からやめて帰ってきた!?」
激しくさえ子を叱る大輔。
「……ごめんなさい」
反省するさえ子。
「あなた……さえ子もとことん頑張って諦めたんですから許してあげて」
りなに気づくゆり。
「あ、りなさん。たけしなら部屋にいますよ。」
「お邪魔します……」
りなは不機嫌なさえ子の顔を見ながらたけしの部屋に入る。
「さえ子さん。帰って来たんだ。でもなんで怒られてるの?」
「お姉ちゃん。大学を辞めて日本に来たっぽいよ」
「え? なんで?」
「さぁ、それを今、お父さんが聞いているみたい」
さえ子が気にしながらりなはたけしと勉強を始めた。

勉強が終わり、りなが帰るとたけしはさえ子に留学の話を聞いてみた。
「お姉ちゃん、海外生活は楽しかった?」
「そりゃ、もちろん! 楽しかったよ。 いろな所へ行ったし! 絵を描くのも楽しかったし!」
「じゃ、なんで戻ってきたの?」
「……絵を描くのを辞めだんだ」
「なんで?!」
「……どれだけ描いても上には上がいて、私より才能があるやつでいっぱい……」
「そんなに厳しいとこlだつたんだ……」
「たけしはお姉ちゃんがいない間。頑張ったみたいだね。聞いたよ女性恐怖症も治って、成績も上がったって? すごいじゃん!」
「……」
「どうした?」
「僕はお姉ちゃんの絵が大好きだよ」
「え? うん……ありがとう」
「もう、お姉ちゃんの絵を見られないの?」
「そうだね……ごめんね」
「大丈夫、お姉ちゃん、謝らないで……」
「……」
「お姉ちゃん、もしよかったら僕に絵の描き方を教えてくれない?」
「え? どうした急に?」
たけし、スケッチブックを開き今まで描いた絵を開きさえ子に見せた。
「僕、お姉ちゃんの絵を見て、絵を描きたくなって一人で描いて来たんだ……」
さえ子はたけしの絵を見て見事な絵だと思い始めた。
「すごい……たけし!」
「え? 本当?」
「あ! 健太郎に絵を教えてもらったらどう? 私の師匠でりなの父親だよ!」
「え? りなのお父さんに……」
たけしは不安そうに聞いた。
「明日、健太郎さんに会いに行くよ! たけし!」
満面の笑顔を浮かべるたけし。

翌日、さえ子はスケッチブックを抱えたたけしと佐藤家に向かった。そして健太郎にたけしの弟子入りを頼んだ。 だが、問題が一つ。宮本家からは金が出ないので、健太郎はたけしから月謝を取れない。健太郎とさえ子には大問題だった。さえ子は健太郎に頼み込んでタダでたけしを弟子にしてもらった。けれども、りなはどうしてもたけしを東大に合格させなければならない。絵よりも成績が大事だ。そこでさえ子は条件を出した。たけしの成績が上位20位まで入れば健太郎に絵を教えもらうことを許可した。これが実現すればたけしはこれから佐藤家で勉強と絵を学ぶ事ができるのだ。

そして中間テストの結果。
りなは成績1位になって、たけしは21位。ギリギリだったがダメだった。りなは浮かれた気分だったが、たけしは不機嫌だった。そんなたけしは少し涙を流した。それを見てりなはたけしが本気だと知り、健太郎に絵を教えることを許した。
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