一センチと一秒


10分ほどすると、玄関でガチャガチャと音がする。

あんのアホ兄貴・・・年頃の(?)娘が鍵開けっ放しにするかっつーの。

「はいはい、今あけるから待ってよ。」

鍵を開けると、すごい勢いでドアが開いて、兄貴が飛び込んできた。

すれ違いざまに私の肩をポンっとたたいて、サンキューと言っていく。

やっぱりうちの兄貴はいいなぁ。なにより人への気遣いがある。


「美香ちゃ~ん!」


・・・・・・あれさえなければ。


「美香ちゃん、ごめんね?怒ったの?恭ちゃんには美香ちゃんだけなんだよ?」

顔を覗き込むたびに顔を背ける美香の周りをばたばたと動き回る。


まったく・・・。

「コーヒーでいいんでしょう?できるまでに仲直りしといてよ。」

そういいながらキッチンに入る私に目配せをする兄貴。


はいはい、みませんよ。

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