一センチと一秒


兄貴が何を言っても美香は返事をしない。

部屋には、コーヒーメーカーのコポコポという音だけが響いていた。


・・・ちゅっ


兄貴は美香の左手を取り、その甲にキスをした。

見なくてもわかる。もう大丈夫だ。そう思ったとき、


「美香?何で泣くの?」


という兄貴の焦った声。

私も思わず振り向いた。









< 17 / 38 >

この作品をシェア

pagetop