一センチと一秒



毎日見る同じ夢。


何度も見すぎて、夢を思い出せないほうが難しいくらい。





相手はわからない。

ただ、その人とキスをするのだ。


正確にいえば、まだキスはしていない。

その直前でいつも目が覚める。

あと一センチと一秒。

それが本当のところ。



私は彼に恋しているのだろうか。


私は夢の中で、いとおしそうに彼の名を呼ぶ。

でも、朝、夢から覚めれば、自分の口から出たはずの名前も、あんなに激しく見つめた顔も、まったく思い出せないのだ。





ただひとつわかるのは、私は彼とキスがしたい、ということ。







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