一センチと一秒


食べ終わって、洗い物も済ませた。

もちろん彼も手伝ってくれて。




お茶を入れて、リビングに向かうと、彼が自分の隣の席をぽんぽんっとたたいて、おいでという。

私は素直にそれに従った。




「ゆか、俺、お前のこと好きだよ。」と突然の彼の言葉。

「え・・・何、急にどうしたの?」


驚きを隠さずに少し笑いながら答える私に彼は続けた。


「誰か、他に好きなやつができたなら、言ってほしいんだ。」


なにか言わなきゃ・・・ 好きな人なんかできてないって・・・ 私はたかしが好きなんだって・・・


「もし、何か不満があるなら言ってほしい。頼むから、自分の中で整理がついた結果だけを俺に突きつけるのだけはやめてくれ。」


・・・ショックだった。


「・・・怖いんだ。大切な人が急に目の前からいなくなってしまうなんて。ゆかの存在が俺には大きな力になってるから。だから・・・」


言葉はそこで途切れた。初めて聞いたすがるような彼の声。


私はこんなにも彼を傷つけていたんだ。

私は自分の過ちに、そのとき始めて気がついた。





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