一センチと一秒


「・・・距離、置こうか。」


彼の一言に顔を上げる。


「・・・ど、して?」


彼は私が好き、私も彼が好き。なのにどうして・・・。


「ゆか、お互いが好きでも、そのせいで辛かったら意味がないんだよ・・・」


涙がどんどんあふれてくる私に、彼は諭すように言った。


「大丈夫。別れるわけじゃない。きちんと考える時間を持とう。ゆかがどんな結果にたどり着いても、俺は受け止めるから。少し時間を置いて、話し合おう。」


何も言えずにいる私をそっと抱きしめて、髪の毛に短いキスを落とした。


「ゆか、俺はお前が大好きだよ。お前を失うのは本当に怖いんだ。でもそのせいで、お前が一人で我慢して、苦しい思いをするのはもっといやなんだ。わかるよね?」


小さな子供をあやすように、手のひらで私の頬を包み、目線を合わせてくる。



うん、と小さく頷くのをみて、彼は微笑んで、

「ありがとう。」

と、今度はおでこにキスをした。








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