「生きること」 続編

「黒木さん、朝ですよ。」
カーテンを開けると、部屋に朝日の光が差し込み、わたしはまだベッドで眠る黒木さんを起こす為に肩をトントンと叩いた。

黒木さんは眩しそうに目を閉じたが、まだ眠たそうな表情で目を開けると、わたしを優しく見上げ「くる実さん、おはようございます。」とわたしを抱き寄せた。

現実世界に戻って来てから、クロキさんは7年かけて"黒木優"として死神から人間に転生し、わたしが住む狭いワンルームで一緒に生活をしている。
二人でワンルームは狭すぎるので、近々1LDKのアパートに引っ越す予定だ。

「そろそろ起きないと、遅刻しちゃいますよ?」
わたしがそう言うと、黒木さんはわたしを抱き締めたまま「人間は、こんなに眠たくなる生き物なんですね。」と言い、「毎日くる実さんに起してもらえて幸せです。」とわたしの髪を撫でた。

黒木さんは、どういったわけか人間に転生してから既に医師免許を取得していて、今は総合病院の心療内科医として働いている。

もちろんわたしは、あのお花屋さんで働き続けていた。

黒木さんはやっとベッドから身体を起こすと、わたしに優しく口づけた。

そして「人間って、素晴らしい生き物ですね。こんなに色んな感情があって、人を愛することが出来る。これもくる実さんのおかげです。」と言うと、再びわたしを抱き締めたのだ。

「7年待ち続けて良かったです。」
わたしがそう言うと、黒木さんは「待たせ過ぎてしまいましたよね、すいません。」と言い、わたしたちは顔を見合わせて笑った。
< 1 / 44 >

この作品をシェア

pagetop