「生きること」 続編

黒木さんの休憩時間は確か13時頃。
本来は診療時間は12時までなのだが、黒木さんは患者さんたちから人気があるらしく、いつも予約が埋まっていて、診療時間を過ぎてしまうことが当たり前になっているらしい。
指名予約も半年先まで埋まっている程なのだ。

わたしは9時頃に布団から出ると、お弁当を作り、13時には届けるのが間に合うようにバスに乗り、黒木さんが勤める病院を目指した。

丁度病院前のバス停で降りると、病院の正面玄関から入り、心療内科の受付に向かった。

すると、何だか院内が騒がしいのに気付く。

受付の方を見ると、若い女性が受付の人に向かって、何か文句を言っているようだった。
しかし、その声を聞き、わたしはゾッとした。

聞き覚えのある甲高くも甘ったるい声。

そして、その姿にわたしは確信をした。

「わたしの担当は黒木さんがいいの!だから、黒木さんに会わせてよ!!!」
受付の人にそう怒鳴り散らしていた茶髪の巻き髪の女性は、紛れもなく舞さんの姿だったのだ。

わたしは慌てて、近くの柱に身を隠した。

何で舞さんが?!
闇になって、あの世に送られたんじゃないの?!

「黒木先生の予約はいっぱいで半年先まで埋まっています。」と受付の人に断れても、騒ぎを立て続ける舞さんは、警備員を呼ばれ、外に連れ出されて行った。

舞さんの姿にあの時の記憶、恐怖が蘇る。

わたしは急いで受付に行き、黒木さんがいる医局へ入る許可証を貰うと、早足に黒木さんの元へ向かった。
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