転生聖職者の楽しい過ごし方【閑話集】
建国記念日
ゼフェン・プリズマーティッシュ・クルウレンの二月は賑やかだ。それは馬車の中からしか見られなくても感じられる。
一応この国でも二月は一番寒い時期らしいが、体感としてはスタンドカラーの厚手コートがあればマフラーはいらないくらい。ダウンはこの国では必要無さそう。
二月にある建国記念日は、神話の時代虹の女神Irisがこの国を創生していく過程で出会った青年に自身の力を分け与え、この人間界の誰よりも強い力を得た青年が王として即位し、女神を王妃に迎えた。この出来事を基に三日間の祝日にし、盛大に祝っているらしい。
女神が青年に自身の力を分け与えた時、女神が青年に渡したとされる白い花は今ではこの国の愛の告白の定番になっているようで、毎年女性から男性へ告白する定番の日にもなっているらしい。
正直、どっかで聞いたことある行事だとは思ったが、毎年祝日の初日は中央広場の騎士像前は若い男女でごった返しているらしい。
「リナさんや、アナスタシアさんも告白したの?」
「私は、何故かまわりに親が決めた許嫁がいるだろうと思われていましたので、そのような経験がございません。」
あっ私の侍女をやってくれている事でいつも忘れちゃうけど、アナスタシアさんは超の付くご令嬢なんだわ。しかもこんな美人さん……相当なイタイ奴じゃなきゃ、対等になんて話せないよね……。
「私の場合は声をかけると、何故か決闘か手合わせの誘いだと思われていて。逃げられていました。」
……リナさん。バシュレ幕僚が学生時代は俺とリュカしかリナに勝てる奴がいなかった。俺たちも数回に一回は負けてたと言っていたっけ。しかも顔立ちがキリッと派美人だしね。良く考えると私の侍女って色濃いな。
「初日に告白をして、成功すると翌日は王都にある丘に行きます。そこが初代王が即位を宣言した丘なのでそこで、二人が特別な仲であることを叫ぶのです。」
「うわー。何それ、恥ずかしいじゃん。絶対にやめて欲しい……。」
想像できる。悠なら絶対にやる。嬉々としてやる。きっと一番目立つ格好をわざと選んで、喉の手入れもして叫ぶに決まってる。そう。悠はそんな奴だ。私が中二の時、試合帰りに告白したら、駅のホームで叫んだ。俺も里桜が好きだって。今思い出しても顔から火が出る。
「そして、告白に失敗をした女性は最終日のボンファイアに白い花を焼《く》べます。しかし、最終日は仲睦まじかった王と女神に肖《あやか》った多くの夫婦の結婚記念日でもあるので、一人っきりの女性と円満な夫婦が一つのボンファイアを囲むと言うちょっと混沌とした空間が生まれるのです。」
「そう…。」