チャリパイ11~時をかける森永探偵事務所~

まるで『人間サンドバッグ』のように、隊尊に殴られ放題のシチロー。


自信満々だったその顔は、もはや原型をとどめていなくなっている。


「うわぁ~!痛そう!」


子豚もひろきも、見ていられないという風に両手で自分の顔を覆い隠し、ただひたすら第1ラウンド終了のゴングが鳴らされるのを待つ。


「ティダ!あと何秒?」


「あと20秒!」


こんな時の20秒は、気が遠くなる程長く感じる…


いっそのこと、タオルを投げ込んでしまおうか…そんな葛藤と戦いながら、ようやく3分間が過ぎた。



カァーーン!



「シチローーッ!」


立っているのがやっとな位、ふらつきながら
コーナーに倒れ込んで来るシチローの足下に、てぃーだが慌てて椅子を差し出す。


「シチロー!大丈夫?
ちゃんと生きてる?」


「あぁ…なんとか…」


顔中が腫れあがり、言葉を発するのも辛そうな
シチローに、凪が思い詰めた顔で弱音を吐いた。


「もう無理よ…シチロー…ピエールが言っていたように、今度ばかりは
まぐれなんかじゃ勝てない。実力の差は歴然よ!」


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