チャリパイ11~時をかける森永探偵事務所~
格さんがいつも肌身離さず持っていたはずの印籠だが、今日はあいにく着ている物がいつもと違う。
悪代官達を欺く為に人夫の格好へと着替えた時に、印籠をいつもの着物に入れたまま、宿に忘れて来てしまったのだ。
光圀を挟んで反対側に立つ助さんは、あきれた様に愚痴をこぼす。
「なんてこった!
これでは話にならん!
印籠が無くて、どうやって悪人共をひれ伏す事が出来よう……印籠が無きゃあ~御隠居なんて『只のクソ爺ぃ』だぞ……」
そばで聞いていた
てぃーだが驚いた様に呟いた。
「助さん、何かスゴイ事言ってますけど……」
「…ど~せ儂は只のクソ爺ぃじゃよ……」
そう言ってその場にしゃがみ込み、足下の土にぐるぐると輪を描きながら光圀。
「あ…いや、今のは言葉の“あや”でして……決して本心では……」
慌てて光圀をなだめる助さん、その一方で頭を抱えオロオロする格さん。
そんな三人を眺めながら、シチローは呟いた。
「なんだか面倒臭えなぁ……この人達……」
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