チャリパイ11~時をかける森永探偵事務所~

印籠を持たない水戸黄門。


当初の予定はすっかり狂い、悪代官達を前にして最大のピンチを迎えていた。


光圀達の事などまったく信用していない悪代官側からは、容赦ない追及の言葉が発せられる。


「おい!そこのクソ爺ぃ!本当に水戸の御老公だというのなら、早く印籠を見せてみろ!ほれ!ほれ!」


しかし、見せろと言われても、無いものは無いのだ。


すると、ほとほと困り果てている格さんのもとへ、子豚が近寄って来て何かを手渡した。


「仕方ないわね~
これ貸してあげるから、使いなさいよ!」


「こ…これは・・・」


それを受け取った格さんの表情も、なんとも微妙だ。


「ちょっとコブちゃん、格さんに何渡したの?」


戻って来た子豚にシチローが尋ねてみると……


「ああ~あれ♪
この間『此処州』で食事した時に、格さんに撮らせてもらった印籠の写メよ♪」


「…いくら何でも……
そんなの通用する訳無いだろ、コブちゃん……」


そんな呆れ顔のシチロー達の傍らで、子豚のピンクのケータイ片手に格さんのあの台詞が再び発せられた。


「ええ~い!ひかえおろう~!この紋所が目に入らぬかあぁぁ~!
皆の者、頭が高ぁ~い!」







「はっ!あの家紋はまさしく!水戸の御老公様!」


「ははぁぁぁ~~っ!」


「ひでぇインチキ……」


何でも、やってみるものである。


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