幸せだよと嘘をつく
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雪乃は毎週水曜日と金曜は隔週で前島さんの家へ通うようになった。
前島の子どもの太陽君とも仲良くなり、家事代行の雪乃さんという存在になる。
「雪乃さん今日の晩御飯は何?」
くりんとした目の可愛い男の子が雪乃のエプロンを掴んで訊ねてくる。
リンゴみたいな可愛い頬っぺたも、小さな手のひらも全てが愛おしく感じる。
「今日は、太陽君リクエストのグラタンにしようと思ってるの。エビグラタンとサラダとフライドポテトね」
太陽君はフライドポテトを毎日食べたいという。
揚げ物だからどうかなと思い前島さんに聞くと、週に一度だけだしあまり気にしないよと言われた。
「おばあちゃんの料理はいつも香ちゃんが作るんだけど、煮物や魚が多いから、あまり好きではないんだ」
香ちゃんとは亡くなった奥さんの妹さんだという。
前島さんにとっては義理の妹にあたる人で、独身で実家住みだから太陽君の母親代わりをしてくれているらしい。
「フライドポテトも毎日食べたら飽きちゃうでしょう?」
「飽きないよ。でも香ちゃんはあまりポテトを出してくれないんだ」
「きっと太陽君が健康でいられるように、香ちゃんは考えてくれているのね.私は適当だから、そのうち晩御飯がお菓子になっちゃうかもよ」
「それなら、毎日作ってくれていいよ!お父さんに、毎日来てもらうようにお願いする」
「ふふふ。お菓子の晩御飯になったらお父さんが嫌がるよ。それに、これはお仕事だから毎日来るのは無理なの」
子どもがこんなに可愛いなんて思わなかった。
太陽君が特別可愛いのかもしれない。一緒に過ごす時間が増えると情も湧いてしまう。
一定の距離感は保たなければならないなと自分にいい聞かせた。