幸せだよと嘘をつく
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「時間を置いて、関係を復活させる気でいるのかもしれないわね」
「ん?どうしたの」
康介が風呂上りにビールを飲みながら雪乃に訊ねてきた。
残業を減らしたのか、彼は最近、早い時間に帰宅する。
康介が先に帰っている時は、雪乃の夕飯を作ってくれていた。
嫁に尽くす旦那作戦だと思うけど、仕事を早く終える事ができたのかと思うと腹立たしい。
今更感が否めない。
雪乃は平穏な夫婦を演じている。
今までと変わらず、仲の良い夫婦だ。
ただ、執拗なボディータッチは心情的に無理だ。
それに愛しているとか、好きだとか、幸せだと口にだして言わなくなった。
「今日はちょっと疲れたの。先に休んでいいかしら?」
「ああ……その……明日って水曜日だよね」
「ええ」
「帰りは、やっぱり遅いのかな?」
「そうよ、接待だから遅くなるわ」
水曜と金曜の雪乃の予定は接待だ。
康介は半年間「今日は接待で遅くなる」と言って不倫していた。
だから雪乃も同じ言葉をそのまま夫に伝える。
訊かれても雪乃は接待としか言わない。
本当のことを言うはずないのに、わざわざ確認してくるのはなんでなんだろう。
「適当に晩飯食って帰るよ」
「そうね。美味しいものでも食べてきてね」
笑顔でそう返事をして寝室へ向かった。
明日は、前島さんと、綾ちゃんと3人で焼き肉を食べに行く。
決起会だ。もちろん雪乃が御馳走する。
雪乃は康介に300万プラス弁護士費用とこれまでに彼女に使ったホテル代など150万、真奈美さんに慰謝料300万を請求する。