幸せだよと嘘をつく



そもそも真奈美さんとの始まりは何だったんだろう。
ただ、マンネリ化した夫婦関係のストレスを発散するための浮気だったんだろうか?

「彼女との始まりは何だったの?」


「真奈美のご主人は単身赴任になって3年目だった。彼は赴任先で浮気していた」

なるほどそれで納得がいった。
なぜ真奈美さん夫婦がすんなり離婚になったのかが不思議だった。
いくらなんでも、子供がいるのに決断が早すぎると思っていた。


「そう、真奈美さんはご主人の浮気を知っていたのね」

「ああ。旦那の不倫に悩んでいて、その相談を受けていた。そして、そのうち体の関係を持ってしまった」


浮気を知って、他の男性と自分も関係を持とうとした。けれど私は思いとどまった。
けれど、あのまま前島さんに抱かれてもいいという気持ちはあった。彼に迷惑をかけていたし、康介は他の女を抱いたのだから。
けれど、結婚している状態で関係を持ったら、それは不倫だ。倫理に反している。私は自分をそこまで落としたくない。
結果、抱かれなかったとはいえ、キスはした。雪乃は自分が責められているような気がした。


「どちらが先かとかいう問題ではないわよね。多分……」


浮気をした事実は、理由はどうあれ消えない。


「君は……前島さんと、体の関係を持った?」

「それを聞かない約束のはずでしょう」


「……そうか」


康介は目をぎゅっと瞑って、天井を仰いだ。


「他の男に妻が抱かれたとしても、あなたは私と離婚しないの?」

「契約通りの事をしただけだろう。俺に君は責められない」


康介は耐えられるんだろうか。


長年夫婦をしていると、一度や二度の浮気はあって当たり前だという人もいる。
きっとそうなのかもしれない。

それくらいは許して、皆我慢して夫婦関係を継続させているのだろうか。
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